【不動産売却の確定申告】税理士に依頼する場合の費用相場は?
不動産を売却して利益が出た場合には確定申告を行わなければなりません。また、売却により損失が出た場合でも申告したほうが得になるケースもあります。確定申告は自分でもできますが、税理士に依頼することも可能です。この記事では、税理士に依頼する場合に気になる費用相場や税理士に依頼するメリットについて、確定申告の手続きで必要となるものや売却時の税金の計算方法、適用を受けられる特例などとともに解説します。
INDEX
不動産売却で確定申告が必要な場合とは
不動産売却の際に確定申告が必要となるケースは大きく2つあります。
1つ目は譲渡所得が発生したときです。譲渡所得とはいわゆる売却益のことで、不動産を売却した代金から取得費と諸経費を差し引き黒字になった場合の金額を指します。譲渡所得が発生するのは不動産の売却価格が購入したときの価格を上回るときです。譲渡所得が発生した場合には譲渡所得税を納めなければならず、確定申告の必要が生じます。
2つ目は特例の適用を受ける場合です。特例の適用を受けると納めるべき税金を軽減できます。売却時に適用対象となる特例の詳細については後で詳しく解説します。
不動産売却時の確定申告を税理士に依頼するメリット
不動産の売却時に必要な確定申告の手続きを税理士に依頼するメリットは主に4つあります。
1つ目は複雑で面倒な確定申告書の作成を代行してもらうことで手間が省けることです。確定申告書の作成にはさまざまなルールがあり、記載すべき項目も多数あります。申告書は期限までに作成を終えて提出しなければならず、特に他に仕事などを持っていて忙しい場合には、税理士に依頼すると楽です。
2つ目は重要な確定申告の手続きを正確かつスムーズにできるようになることです。確定申告書は申告内容にミスや漏れがあったり、提出が遅れたりするとペナルティが科せられる場合もあるため、期限を守って正しく行わなければなりません。税務の専門知識を持つ税理士であれば、確定申告の書類の用意や申請を確実に行ってもらえるうえ、税務調査が入った場合にはその対応もしっかりしてもらえます。
3つ目は節税方法などを知れることです。不動産売却の際の確定申告では特例の利用により税金を軽減できる場合があります。しかし、自分が利用できる特例を税務署が積極的に教えてくれるわけではありません。また、特例は条件が複雑だったり制度の改正があったりと素人には理解や把握が難しい場合もあります。一方、税理士に依頼すれば、その年に自分のケースで実際に利用できる特例について的確なアドバイスをもらうことが可能です。
4つ目は税務に関する、その他のさまざまな相談もできることです。税理士が専門とするのは譲渡所得税に関することだけではありません。相続など、その他の税務についてわからないことがあれば相談にのってもらえます。
不動産売却時に税理士に確定申告を依頼する手続きの流れ
税理士に確定申告を依頼する場合、依頼するタイミングは確定申告書の提出期間直前となる12~2月頃を目安にするとよいでしょう。不動産売却時の確定申告の期限は例年、不動産を引き渡した年の翌年2月16日~3月15日となっています。
また、確定申告に必要となる書類や資料を一式揃えて税理士に渡しておかなければなりません。確定申告で必要な書類とは不動産売買契約書、法務局で取得する不動産登記簿、通帳のコピーです。会社員は給与所得の源泉徴収票の提出も求められます。
さらに、取得時の資料として登記費用やその他取得に関わる領収書を、売却時の資料として固定資産税を清算したときの関係書類や測量の際の費用、その他売却に関わる各種費用の領収書も用意しなければなりません。仲介手数料の領収書は取得時と売却時の両方が必要です。
ただし、取得時や売却時の資料は原本ではなくコピーの添付も認められています。
不動産売却時に税理士に確定申告を依頼する場合の費用相場
確定申告を税理士に依頼した場合にかかる費用は不動産売却による譲渡所得額によって決められていることが一般的です。詳細な費用は税理士事務所によって変わるものの、不動産の売却代金である譲渡価額が5000万円以下だと10万円、5000万円超1億円以下だと15万円、1億円超2億円以下だと20万円が相場となっています。
譲渡価額が2億円を超える場合には要相談となることが通常です。基本的な確定申告の手続きに加えて、各種特例の適用を受ける場合には別途3万円~5万円程度の料金が追加されるケースが多く見られます。
不動産売却時の税金の計算方法
土地や建物などの不動産における譲渡所得税は「譲渡所得(売却益)×税率」で算出します。
譲渡所得(売却益)の算出方法は「譲渡価額(売却価格)-土地・建物の取得費-譲渡費用」です。土地や建物の取得費が確認できない場合には「譲渡価額(売却価格)×5%」を取得費として計算します。譲渡費用は、仲介手数料や測量費など、売却の際にかかった必要経費の合計額です。
また、譲渡所得税の計算式で適用する税率は不動産の保有期間によって決められています。不動産の保有期間が5年超の場合は所得税約15%+住民税5%=約20%、5年未満の場合は所得税約30%+住民税9%=約39%が適用税率です。
不動産売却時の特例
不動産の売却に関わる特例を7つ紹介します。
1つ目は「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」です。マイホームの売却益が3000万円までで、なおかつ要件に該当していれば税金がかからなくなります。
2つ目は10年超の期間を保有していた不動産の売却時に受けられる軽減税率の特例です。不動産譲渡は5年以下の短期所有のものに対して高い税率がかけられるため、5年は税金が安くなる1つのボーダーラインとなります。しかし、この10年超保有の不動産に対する軽減税率の特例を受ければ5年超の場合よりもさらに税率が軽減されます。
3つ目はマイホームの買い替えで売却代金より購入代金のほうが高かった場合に受けられる特例です。収入より支出のほうが多くなる買い替えだと課税の対象外となります。
4つ目は「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」です。住宅ローンが残っているマイホームを残債より安く売却したことで譲渡損失が出た場合、一定の要件を満たしていれば、損失を出した年から3年間は給与所得や事業所得などと譲渡損失を損益通算できます。
5つ目は取得費加算の特例です。相続税が課せられていて納税している不動産を相続後3年10カ月以内に売却すると取得費に相続税の一部を加算することで譲渡所得にかかる税金を軽減できます。
6つ目は公共事業などを目的とした収用のための土地の売却時に対象となる特例です。公共事業施行者からの買取の申出を受けてから6カ月以内の売却であるなど一定の要件をクリアしていれば5000万円まで特別控除が適用されます。
7つ目は事業用資産である不動産の買い替え時に対象となる特例です。適用されると譲渡税の課税の繰り延べが可能となります。
不動産売却時の確定申告は税理士に任せると安心
確定申告は申告書の作成に手間がかかるだけではなく、土地や建物などの不動産売却に関わるさまざまな特例をしっかり利用しようとすると手続きが複雑になり大変です。各特例の要件を正しく把握することも簡単ではありません。税理士に依頼すれば書類を正確に作成でき、煩雑な確定申告の手続きもスムーズに進められるうえ、節税効果にも期待が持てます。税理士選びも効率よく行いたいなら税理士紹介会社を利用するとよいでしょう。