建設業の会計事情は複雑!建設業に強い税理士の選び方
建設業は業務の流れが独特かつ複雑で、会計処理も全く異なります。建設業の経営者が顧問税理士を選ぶなら、建設業の業務の流れや会計処理に習熟しているかが1つの基準になるでしょう。税理士であっても、それぞれの得意分野は全く異なるため、すべての税理士が建設業の業務の流れや会計処理に習熟しているとは限らないのです。今回は「建設業に強い」税理士の選び方とメリットについて解説しましょう。
INDEX
建設業に強い税理士の選び方
建設業に強い税理士を選ぶには、どんな点に注目すれば良いのか、解説します。
1.建設業の税務を担当した実績がある
建設業における業務の流れを簡略化して説明しましょう。まず、建設会社の営業担当者が営業活動を行い、案件を探します。探してきた案件に対して工事の見積もりを行ったうえで入札し、受注できた場合は正確な工事原価総額を計算する流れです。 その後、下請け業者への発注を行い、施工作業に移ります。そして、工事が完成したら、検査・建築確認を経て物件が引き渡されます。最後に請負金の受け渡しが行われ、一連の取引が完了する流れです。なお、並行して施工作業の進捗度合いに応じ、下請け業者に外注費の支払いが行われる点にも留意しましょう。
ここまで可能な限り流れを簡略化して説明しましたが、実際はもっと複雑です。そして、工期はそれぞれの案件によって全く異なります。1週間程度で終わるものもあれば、5年、10年という長期間単位で動く案件もあるのです。工期が長くなればなるほど、業務全体の流れを把握するのも難しくなります。 加えて、建設業と一口に言っても「どんな工事をするのか」によってさらに細かく分けられるのも大きな特徴です。まず「総合的な企画や指導などのもと、土木工作物や建築物を建設する工事」である一式工事と、それ以外の工事である専門工事に分けられます。 さらに、一式工事は2種類、専門工事は27種類にわけられるため、合計で29種類もの建設業が存在するのです。
29種類のうち、どこに分類されるかによっても会計処理が微妙に異なるため、違いを踏まえて対応できる税理士でないと、建設業に強い税理士とは言えません。その税理士が建設業の会計・税務に対応できるかどうかは、公式Webサイトなどで公開されている取引実績を見て判断すると良いでしょう。担当した企業の分野、企業の規模、税務の範囲が1つのバロメーターになります。
2.建設業特有の事情や会計を理解している
税理士試験においては簿記論・財務諸表論が必須科目であるため、会計がまったく理解できない税理士はほとんどいないと考えてよいでしょう。しかし「建設業」の会計となると、話は別です。建設業ならではの特殊な事情を反映した会計処理が行われるため、建設業の顧問先を数多く担当してきた税理士でないと対応がしにくい部分もあります。 まず、会計処理が完了するタイミングについて考えてみましょう。工期が5年、10年と長期にわたる工事も珍しくありません。そのため、会計処理も工事が完成し、引き渡さないと終わらないのです。
また、支出項目も独特です。建設業ならではの項目として建材費・外注費・人件費・現場までの移動費用・廃棄物処理費などが考えられますが、さまざまな納品書や請求書を集めて集計しなくてはいけないので、慣れていないと大変でしょう。加えて、建設業では建設業会計が適用されるため、一般的な会計処理では使われない勘定科目も出てきます。 たとえば、工事中に材料費や外注費を支出していた場合でも、一度未成工事支出金という別の勘定科目で経理処理をしなくてはいけません。工事完成後に未成工事支出金が工事原価に振り替えられるという特殊な処理が行われるのです。
他にも、一般的な処理ではまず使わない完成工事高、未成工事支出金、未成工事受入金、完成工事未収入金、工事未払金などの勘定科目を使うため、慣れていないと戸惑うでしょう。たとえ、税務・会計のエキスパートである税理士であっても、建設業会計はかなり特殊です。建設業を営む企業の顧問税理士を選ぶなら、建設業ならではの事情や建設業会計に習熟している人から選びましょう。
3.行政書士と提携している
建設業者が国・地方公共団体が行う公共工事を請け負うには、入札を経なくてはいけません。入札とは、国や都道府県、市町村等の地方自治体が、公共事業の事業内容と契約事項を公示して、最も有利な条件を出した業者に契約を発注する手法のことです。そして、入札に参加するためには、あらかじめ経営事項審査(経審)を受けなくてはいけません。さらに、この経審を受けるためには、建設業許可が必須となります。
実際のところ、建設業者が建設業許可や経審を受けるためには、行政書士に依頼するのがトラブルもなくスムーズにいくでしょう。このため、行政書士と連携している税理士を選ぶか、行政書士登録も済ませている税理士に依頼するかのいずれかで進めるのが望ましいです。
4.社会保険労務士と連携している
建設業者が国・地方公共団体が行う公共工事を請け負うには、入札を経なくてはいけません。入札とは、国や都道府県、市町村等の地方自治体が、公共事業の事業内容と契約事項を公示して、最も有利な条件を出した業者に契約を発注する手法のことです。そして、入札に参加するためには、あらかじめ経営事項審査(経審)を受けなくてはいけません。さらに、この経審を受けるためには、建設業許可が必須となります。
実際のところ、建設業者が建設業許可や経審を受けるためには、行政書士に依頼するのがトラブルもなくスムーズにいくでしょう。このため、行政書士と連携している税理士を選ぶか、行政書士登録も済ませている税理士に依頼するかのいずれかで進めるのが望ましいです。
建設業の会計に強い税理士に依頼するメリット
ここまでの内容を踏まえつつ、建設業の会計に強い税理士に依頼するメリットを考えてみましょう。まず、資金調達の面からみたメリットです。建設業では工事が完成するまで売上が入ってこないにもかかわらず、費用は完成まで発生し続けます。支出から入金まで長期間かかる以上、資金繰りが悪化するリスクは常にあります。しかし、税理士が融資・資金調達の面でサポートすれば、リスクは軽減できます。
また、建設業会計は勘定科目・会計処理が独特なため、正しい知識がないと決算書や申告書を作れません。融資を受けられなかったり、本来は払わなくて良い税金を払ったりする可能性すらあります。しかし、税理士のサポートのもと、現場別工事台帳を作成すれば、各現場の損益状況も正確に把握できます。その経過を見ることで経営状況や資金繰りの把握もできるため、将来を見据えたアドバイスもできるでしょう。
建設業の会計事情を熟知した税理士に依頼しよう
建設業はさらに細分すると29種類にものぼる上に、会計処理も個々に異なります。加えて、一般的な業界とはかなり事情が異なるのも、建設業界ならではの特徴です。結局のところ、すべての税理士が建設業の会計・税務や事情に習熟しているわけではない以上、税理士を選ぶ際は「建設業に強いか」を基準にしましょう。自分では選べないという場合は、税理士紹介会社を利用して選ぶのも1つの手段です。